エディHCとジャパンとアイデンティティと
ラグビーワールドカップ、とても楽しかった。
南アフリカ戦のニュースが流れてから色々調べたりしながら、試合をチェックしてたけどどんどん引き込まれた。
それにしても男たちの顔がすごくよいね。
五郎丸はもちろんのこと、静かなたたずまいのリーチキャプテン、そしてなんといってもエディジョーンズHC。
エディジョーンズのあの迫力はいったいなんなのか。試合中に客席から見てる時とかまるで仁王像のよう。
結構笑顔も多いのに、なんともいえない怖さというかとにかく厚みや奥行きのある顔だ。
われわれは日本への尊敬を勝ち得るためにここへ来た。大会後、人々が日本は尊敬すべきラグビーの国だと話していることを望んでいる。
http://www.47news.jp/sports/rugby/2015wcup/news/2015/09/576002.html
今回南アフリカ戦の勝利という結果を知った上で過去の発言を遡って読んだけど、完全に先を読みきっていたとわかる。
サモア戦も事前に言っていた通りの結果になったからね。すごすぎる。
「しっかりとしたプランがなければ、強い代表はできないし、やり遂げる力も必要だ。でも、日本ではこれらを遂行するのは難しいだろう。変化を嫌う人もいるからだ」
http://www.nikkansports.com/sports/news/1552458.html
その予言者エディジョーンズは帰国会見でこういう強烈な皮肉のきいた進言をしている。
誰に(どこに)向けたものかはわからないけども、この人が何と戦っていたのかは想像するに余りある。
ラグビー日本代表の他の競技と違うユニークな点は外国籍の選手が多数代表に選ばれていることである。
今回は代表の三分の一が外国人であったという。
帰国会見で一人ずつ感想を言う場面があったが、そこで英語などでしかしゃべれない選手にはやはり微妙な感覚になるし、逆にリーチキャプテンや「ギフト」ことレレィマフィなどは日本語なので親近感が沸く。
エディHCは「JAPAN WAY」という日本独自のスタイルの確立を主張している。内容は専門的すぎてわからないのだけど、少なくともそれは体格で劣っている(今大会一番体の小さな国だった)ことを前提にした戦術なのだろう。
しかし特に制限が無いようなので、全員を外国籍ないしハーフなどを含めた外国人の体格を持った選手で固めることは原理的には可能だ。
今回の「三分の一」というのもさすがに過半数とかじゃまずいよね、という現実的な折り合いをつけた数字に過ぎないじゃないだろうか。
勝つ為に一切の妥協無く最善を尽くしたであろうエディHCによるものなので、これがおそらく現在の限界値。
このような話をすると、では、ラグビーにおける代表チームのアイデンティティーはどこにあるのかと、感じられる方もいらっしゃるでしょう。
しかし私たちに迷いは一切ありません。外国籍の選手や帰化した選手が増えれば増えるほど、逆に日本代表のアイデンティティーはより明確で確固たるものになってきているからです。
選手を代表に招集する際に検討するのは、体格やラグビー選手としての能力の高さだけではありません。これらの要素は非常に重要ですが、私たちは選手としての能力と同じ程度に、日本代表の「哲学」や「価値観」に心の底から殉じることができるかどうか、桜のジャージを身につける責任の重さを十二分に認識し、チームに献身できるかを吟味します。
~中略~
他方、日本代表チームは、もう一つの重要な「価値」も体現しています。それは育成のシステムまで含めた、日本ラグビー界そのものです。
分かりやすいのは、リーチマイケル選手の例でしょう。
リーチマイケル選手は生まれこそニュージーランドですが、15歳の時に留学生として来日。以降は高校、大学、そして社会人ラグビーと、日本ラグビーの強化システムの中でスキルとテクニックを磨き、ついにはスーパーラグビーのチームに移籍するまでになりました。2年前には帰化を果たし、戸籍上も日本人となりましたが、キャリアからもわかるように彼は日本の強化育成システムの中で育ったという意味においても、日本ラグビーが誇る選手なのです。
ラグビー代表の“国籍問題”を語る。岩渕GM「アイデンティティーは哲学」。 - ラグビー - Number Web - スポーツ総合雑誌ナンバー公式サイト
代表のアイデンティティが割合で決まるというのはいかにも脆弱な根拠だが、ここでは普通に考えられてるのとはかなり違う考え方が為されている。
五郎丸がツイートで外国籍の選手への敬意を表したように実際に戦っている選手の感覚というのもまた違う。
日本を背負う誇りを持て、とエディHCはいい選手たちも口々に言っているがそこでいう「日本」とはいったい何なのか。
歴史を変えた瞬間の象徴的なシーン。
実に味のある面白い写真だ。
ここでの日本とは要するに「ジャージ」である、というしかない。